本日は、歯列矯正専門医の佐藤先生(仮名)に、多くの方が気にされる「歯列矯正と面長」の関係についてお話を伺います。先生、歯列矯正で顔の長さは変わるのでしょうか?「まずご理解いただきたいのは、歯列矯正は基本的に歯を動かす治療であり、顎の骨の大きさを直接的に変えるものではないということです。ただし、歯の位置や傾き、噛み合わせの高さを変えることで、顔の見た目の印象、特に下顔面の長さに影響を与えることはあります。例えば、開咬といって奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない状態の患者さんの場合、奥歯を歯茎の方向に沈める『臼歯圧下』という治療を行うことがあります。これにより下顎骨が前上方に回転し、結果としてオトガイ部(顎先)が少し前に出て、顔の垂直的な長さが短くなったように見える効果が期待できます。逆に、非常に稀なケースですが、噛み合わせが深すぎる過蓋咬合の治療などで、奥歯の高さを少し上げることで、顔がわずかに長くなる方向に変化することもあり得ます。しかし、これらはあくまで歯の移動に伴う副次的な変化であり、骨格的な面長を劇的に改善したり、逆に悪化させたりするような大きな変化は、通常の歯列矯正の範囲では起こりにくいと言えるでしょう。面長の主な原因が骨格にある場合は、歯列矯正だけでは限界があり、外科手術を併用する顎変形症治療が必要になることもあります。大切なのは、ご自身の顔立ちのどこが気になっていて、歯列矯正でどこまで改善が期待できるのか、そしてその限界はどこにあるのかを、治療開始前に担当医としっかりと話し合い、共通認識を持つことです。安易な期待は禁物ですが、適切な診断と治療計画のもとであれば、歯並びの改善とともに顔貌のバランスもより良くなる可能性は十分にあります。」佐藤先生、ありがとうございました。やはり専門家との事前のすり合わせが鍵となりそうですね。