矯正中の見た目の変化と心の葛藤

矯正中の見た目の変化と心の葛藤

Dr.asai 2025年6月8日

歯列矯正は、最終的に美しい歯並びと機能的な噛み合わせを手に入れるための治療ですが、その過程では様々な見た目の変化が伴います。これらの変化は、時に患者さんの心に大きな葛藤やストレスをもたらし、治療継続の意欲を削いでしまう「挫折」の一因となることがあります。まず、多くの人が気にするのが矯正装置そのものの見た目です。特に金属製のブラケットやワイヤーは、口を開けた際に目立ちやすく、審美的なコンプレックスを感じる人も少なくありません。また、治療が進むにつれて、歯が移動する過程で一時的に見た目が悪化したように感じることがあります。例えば、抜歯を伴う矯正の場合、抜歯スペースが閉じるまでの間、歯と歯の間に大きな隙間ができて目立ってしまうことがあります。あるいは、前歯を後ろに下げる治療の過程で、一時的に出っ歯感が強調されたり、いわゆる「口ゴボ」の状態が悪化したように見えたりすることも。さらに、歯が動くことで正中線(顔の中心と歯の中心線)が一時的にずれてしまうこともあり、鏡を見るたびに不安を感じる方もいます。これらの見た目の変化は、多くの場合、治療が順調に進んでいる証拠であり、最終的なゴールに向かうための一時的なプロセスです。しかし、そのことを頭では理解していても、日々の生活の中で変化を目の当たりにすると、周囲の視線が気になったり、自信を失ったり、本当に綺麗になるのだろうかという不安に苛まれたりするのは自然なことです。この心の葛藤を乗り越えるためには、まず担当の歯科医師としっかりとコミュニケーションを取り、治療計画や現在の状況、今後の見通しについて十分に説明を受けることが重要です。治療の全体像を把握することで、一時的な見た目の変化も受け入れやすくなります。「これは良くなるための過程なんだ」と割り切る強さも必要かもしれません。また、装置が目立つのが気になる場合は、セラミックブラケットや舌側矯正、マウスピース型矯正装置など、目立ちにくい装置を選択することも検討できます(ただし、適応や費用が変わります)。矯正期間中のメイクを工夫して口元から視線を逸らしたり、マスクを有効活用したりするのも一つの方法です。大切なのは、一人で抱え込まず、不安な気持ちを医療者や信頼できる人に相談することです。