歯列矯正の治療期間を少しでも短縮したいというニーズに応えるため、近年、「加速矯正装置」と呼ばれるいくつかの補助的な装置が開発され、臨床応用され始めています。これらは、主に歯の移動を促進し、治療期間の短縮を目指すものです。代表的なものとしては、「光加速矯正装置(近赤外線を利用するもの)」や「振動型加速矯正装置(微弱な振動を与えるもの)」などがあります。これらの装置は、自宅で患者さん自身が毎日一定時間使用することで、歯周組織の細胞を活性化させ、骨のリモデリング(再構築)を促し、結果として歯の移動がスムーズになるとされています。メリットとしては、やはり治療期間の短縮が期待できる点が挙げられます。メーカーや研究によっては、治療期間を最大で30%~50%程度短縮できる可能性が示唆されていますが、効果には個人差が大きく、全ての症例で同様の結果が得られるわけではありません。また、矯正治療に伴う痛みを軽減する効果が報告されている場合もあります。一方で、デメリットや注意点も理解しておく必要があります。まず、これらの加速矯正装置は、あくまで補助的なものであり、全ての矯正歯科医院で導入されているわけではありません。また、使用には別途費用がかかる場合がほとんどです。そして最も重要なのは、その効果や安全性について、まだ長期的なエビデンスが十分に確立されているとは言えない部分もあるという点です。日本矯正歯科学会なども、現時点ではこれらの装置の使用を積極的に推奨するには至っていません。適応できる症例も限られる可能性があり、例えば重度の骨格的な問題がある場合などには効果が期待しにくいかもしれません。加速矯正装置の使用を検討する場合は、まず担当の矯正歯科医に相談し、ご自身の歯並びの状態や治療計画において、本当にメリットがあるのか、リスクはないのか、費用対効果はどうなのか、といった点を十分に説明してもらい、納得した上で判断することが大切です。
加速矯正装置って本当に効果ある?メリットとデメリット