ワイヤー矯正治療の中盤以降に登場することが多い「ゴムかけ(顎間ゴム、エラスティックゴム)」。患者さん自身が毎日、小さな輪ゴムを矯正装置のフックに引っ掛けるという、地味ながらも非常に重要なステップです。このゴムかけを面倒くさがってサボってしまうと、治療計画に遅れが生じ、結果的に矯正治療期間が長引いてしまう大きな原因となります。なぜゴムかけがそれほど重要なのでしょうか。矯正装置のブラケットとワイヤーだけでは、主に個々の歯を歯列に沿って前後左右に動かすことは得意ですが、上下の歯の噛み合わせを緊密にしたり、特定の歯を引っ張り出したり、あるいは歯列全体を特定の方向に移動させたりといった、より複雑で三次元的な歯のコントロールは難しい場合があります。そこで活躍するのが、この顎間ゴムなのです。ゴムの引っ張る力を利用して、ワイヤーだけでは達成しにくい歯の動きを補助し、上下の歯がしっかりと噛み合うように誘導したり、歯と歯の隙間を閉じたり、正中(顔の中心と歯の中心)を合わせたりする役割を担います。ゴムかけの種類や方向、強さは、患者さん一人ひとりの歯並びの状態や治療の段階に合わせて、歯科医師が精密に計画しています。そのため、指示された通りに、毎日欠かさず、決められた時間装着することが非常に大切です。例えば、「食事と歯磨きの時以外は常に装着」という指示が出ているのに、日中サボって夜だけ装着する、といったことでは十分な効果が得られません。歯は、持続的に適切な力がかかることで初めて効率的に動きます。力がかかったりかからなかったりすると、歯の動きが不安定になり、治療が停滞してしまうのです。面倒に感じるかもしれませんが、ゴムかけは治療の最終的な仕上がりを左右する重要な工程であり、真面目に取り組むことで、より早く、より美しい噛み合わせを手に入れることに繋がります。歯科医師や歯科衛生士から正しいかけ方の指導を受け、鏡を見ながら確実に装着する習慣をつけましょう。
ゴムかけって超重要!サボると矯正が長引く理由