透明で目立たず、取り外しも可能なマウスピース矯正は、多くの人にとって魅力的な選択肢です。しかし、その自由度の高さゆえに、守らなければならない「できないこと」も数多く存在します。これらのルールを軽視すると、治療が計画通りに進まないばかりか、虫歯や歯周病といった深刻なトラブルを引き起こす原因にもなりかねません。まず、最も重要なルールが、「マウスピース(アライナー)を装着したままの飲食は、原則としてできない」ということです。例外は、糖分を含まない「水」だけです。お茶やコーヒー、ジュースなどを装着したまま飲むと、アライナーと歯の間に液体が入り込み、糖分や色素が長時間停滞することになります。これは、虫歯のリスクを著しく高めると同時に、アライナーの着色の原因にもなります。もちろん、食事は論外です。装着したまま何かを噛めば、アライナーは簡単に破損してしまいます。次に、忘れがちなのが「食後、歯を磨かずにアライナーを装着することはできない」というルールです。食べ物のカスや歯垢が残ったままアライナーを装着する行為は、いわば細菌を歯にパックしているようなもの。これもまた、虫歯や歯周病、口臭の大きな原因となります。食事の後は、必ず歯磨きと、できればフロスなどを使って歯と歯の間を清掃してから、アライナーを装着する習慣を徹底しましょう。また、意外な落とし穴が「アライナーを熱いお湯で洗浄することはできない」という点です。アライナーはプラスチックでできているため、熱によって変形してしまいます。変形したアライナーは歯に適合しなくなり、計画通りに歯を動かすことができなくなってしまいます。洗浄は、必ず水と、柔らかい歯ブラシで行いましょう。そして、最も基本的ながら守るのが難しいのが、「装着時間を守らないことはできない」という大原則です。一日20〜22時間という推奨装着時間を下回ると、歯は計画通りに動かず、治療期間が延びる直接的な原因となります。マウスピース矯正の成功は、これらの「できないこと」を理解し、徹底して守り抜く、あなたの強い自己管理能力にかかっているのです。
マウスピース矯正中にできないこと!自己管理の落とし穴