長年、新卒採用の現場で多くの学生を見てきましたが、「歯列矯正をしているから」という理由で、選考が不利になったケースは記憶にありません。むしろ、私はその学生に対して、いくつかのポジティブな印象を抱くことさえあります。本日は、採用担当者という視点から、矯正治療中の学生がどのように映るのか、その本音をお話ししたいと思います。まず、私たちが面接で最も知りたいのは、その学生の「人間性」や「ポテンシャル」です。矯正装置がついているかどうかといった表面的な事実は、評価の本質とはほとんど関係ありません。もちろん、最低限の身だしなみとして清潔感は重要ですが、矯正治療は不潔なものではなく、むしろ健康や審美への意識の高さの表れと捉えることができます。私が矯正中の学生に注目するのは、その背景にある「主体性」と「計画性」です。歯列矯正は、決して安価でも短期間でもない、大きな自己投資です。それを学生のうちに自らの意思で始めるということは、「自分自身の課題を認識し、その解決のために具体的な行動を起こせる人材」であることの証左となり得ます。また、治療には数年という長い期間がかかることを理解した上で、就職活動という重要な時期を見据えて計画的に治療を進めているのであれば、その長期的な視点や計画性も評価できるポイントになります。唯一、私たちが少しだけ気にする可能性があるとすれば、それは「滑舌」です。特に、営業職や接客業など、コミュニケーション能力が重視される職種では、話す内容が明瞭に伝わることは非常に重要です。しかし、これもマイナス評価に直結するわけではありません。もし滑舌に不安があるのなら、それを補って余りあるほどの熱意や、ハキハキとした態度で話す努力が見えれば、私たちはその姿勢を評価します。むしろ、ハンディキャップを克服しようとする努力は、その学生の人間的な強さとして、魅力的に映るのです。ですから、矯正をしている学生の皆さんには、装置のことなど気にせず、堂々と自分自身をアピールしてほしいと心から願っています。
人事担当者は語る矯正中の学生の意外な評価