「歯列矯正をすると歯が抜けるかもしれない」という漠然とした不安を耳にすることがあります。確かに、歯に力を加えて動かすという治療の性質上、様々なリスクがゼロとは言えません。しかし、この「歯が抜ける」という言葉のイメージが先行し、多くの場合、誤解を生んでいるように感じます。私自身、歯列矯正を経験しましたが、治療を始める前はやはり同じような不安を抱えていました。しかし、信頼できる歯科医師に出会い、丁寧な説明を受ける中で、その不安は徐々に解消されていきました。まず理解しておきたいのは、適切な診断と管理のもとで行われる歯列矯正によって、健康な歯が予期せず抜け落ちることは極めて稀だということです。歯周病が重度に進行しているなど、特別なリスク因子がない限り、矯正治療が直接的な原因で歯を失うことは考えにくいのです。むしろ、歯列矯正は「歯を守るための投資」という側面が大きいと私は考えています。歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい場所ができ、磨き残しから虫歯や歯周病が進行しやすくなります。これらは将来的に歯を失う最大の原因です。また、噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な負担がかかり続け、歯が割れたり、歯周組織がダメージを受けたりすることもあります。歯列矯正によって歯並びや噛み合わせを整えることは、これらのリスクを軽減し、結果的に歯の寿命を延ばすことに繋がるのです。もちろん、スペース確保のために健康な歯を計画的に抜く「便宜抜歯」はありますが、これは歯を失うのとは全く異なり、より良い口腔環境を作るための戦略的な選択です。矯正治療には時間も費用もかかりますが、それによって得られる美しい歯並びと健康な噛み合わせは、一生の財産になります。「歯が抜けるかも」という誤解に囚われず、矯正治療のメリットや、将来の歯の健康への貢献という視点も持って、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。不安なことは専門医に相談し、正しい情報を得ることが大切です。
歯を守るための矯正!誤解だらけの歯抜けリスク