昔から、自分の笑顔にどこか自信が持てませんでした。それは、上の前歯の左側2番目の歯がほんの少しだけ、本当にごくわずかに内側に引っ込んでいるのが原因でした。他の人から見れば「全然気にならないよ」と言われる程度のものだったのですが、自分にとっては鏡を見るたび、写真を撮るたびにどうしても目についてしまうコンプレックスだったのです。でも、歯列矯正というと、あのギラギラした金属のワイヤー装置をつけて何年も過ごさなければいけないというイメージが強く、費用も高額だろうし、そこまでするほどではないかな、と長年諦めにも似た気持ちで過ごしていました。そんなある日、インターネットで何気なく歯並びについて調べていると、「軽度の歯列矯正」「マウスピース矯正」というキーワードが目に飛び込んできました。透明なマウスピースなら目立たないし、もしかしたら私のようなちょっとした悩みでも対応できるのかもしれない、と一縷の望みを抱き、勇気を出して矯正歯科のカウンセリングを予約しました。いくつかの歯科医院を回って話を聞き、精密検査をしてもらった結果、ある先生から「あなたの場合は軽度の叢生ですね。この部分的な歯の重なりであれば、マウスピース型矯正装置を使って半年から10ヶ月程度で改善が見込めますよ」という診断をいただきました。治療期間も思ったより短く、費用も全顎矯正に比べれば手が届く範囲だったため、ついに長年の夢だった歯列矯正を始めることを決意したのです。初めてマウスピースを受け取り、装着した時は、今までにない圧迫感と、少し話しにくい感じがありましたが、先生から「最初は誰でも違和感があるけれど、数日で慣れますよ」と言われた通り、本当に3日もするとほとんど気にならなくなりました。食事と歯磨きの時以外は1日20時間以上装着するというルールを守り、2週間ごとに新しいマウスピースに交換していくというサイクルです。透明なので、仕事中も友人と会う時も、誰かに矯正していることを指摘されることはほとんどありませんでした。たまに新しいマウスピースに交換した直後は少しきつく感じることがありましたが、それは歯がちゃんと動いている証拠だと前向きに捉えることができました。