私は以前から、上の前歯の真ん中2本が少しだけ前に出ていて、その隣の歯がわずかに内側に入り込んでいるのが気になっていました。笑うと少しだけ目立つその部分的な歯並びのズレが、長年の小さなコンプレックスでした。仕事も忙しく、矯正治療に何年もかけるのは難しいし、費用もできるだけ抑えたいと思っていたので、「部分矯正なら短期間で治せるかもしれない」と淡い期待を抱き、矯正歯科のカウンセリングを受けることにしました。いくつかの歯科医院を回り、私の希望を伝えると、あるクリニックでは「前歯だけの部分矯正で対応可能ですよ。期間も半年くらいでしょう」と言われ、心が踊りました。しかし、別の矯正専門のクリニックでより詳しく検査をしてもらったところ、思いがけない診断結果を告げられたのです。「確かに前歯の見た目は部分矯正である程度改善できるかもしれませんが、奥歯の噛み合わせが不安定で、特に右側の奥歯がしっかりと噛んでいません。この状態で前歯だけを動かすと、さらに噛み合わせのバランスが崩れ、将来的に顎関節に問題が出たり、他の歯に負担がかかったりするリスクがあります。根本的な解決のためには、全顎矯正で全体の噛み合わせからしっかりと治すことをお勧めします」とのことでした。正直、ショックでした。部分矯正で手軽に治せると思っていたのに、全顎矯正となると治療期間も長くなるし、費用もかさむ…。しかし、先生はレントゲン写真や歯の模型を使って、私の噛み合わせの問題点や、部分矯正だけでは解決できない理由、そして全顎矯正によって得られる長期的なメリットについて、非常に丁寧に説明してくださいました。見た目だけでなく、機能的な面、そして将来的な歯の健康までを考えると、先生の提案が最も理にかなっていると感じ、悩んだ末に全顎矯正を受けることを決意しました。治療が始まると、確かに前歯だけでなく、奥歯にも装置がつき、最初は違和感がありましたが、徐々に歯が動いていくのを実感するとともに、以前は感じなかった「しっかり噛める感覚」が芽生えてきました。そして、約2年間の治療を終えた今、鏡に映る自分の歯並びは、気にしていた前歯はもちろんのこと、全体のアーチが綺麗に整い、以前とは比べ物にならないほど自然で美しい笑顔になりました。
部分矯正を希望したけれど全顎矯正になった私