歯列矯正を始めて約半年が経過した頃、ついにその日がやってきました。先生から「今日から輪ゴムを使っていきましょうね」と、小さな袋に入ったカラフルな医療用ゴムを手渡されたのです。正直、話には聞いていましたが、実際に自分の治療に取り入れられるとなると、喜びよりも不安の方が大きかったのを覚えています。「こんな小さなゴムで本当に歯が動くの?」「ちゃんと自分でかけられるかな…」そんな思いが頭の中をぐるぐると巡っていました。最初の挑戦は、鏡の前での格闘でした。先生に教えてもらった通りに、上の歯のフックと下の歯のフックに輪ゴムをかけようとするのですが、これが想像以上に難しいのです。指は滑るし、ゴムはあらぬ方向に飛んでいくし、口の中は狭くて見えにくいしで、初日は数十分もかかってしまいました。装着した直後は、今までにないような引っ張られる感覚と、じんわりとした痛みが襲ってきました。「これを毎日続けるのか…」と、少し心が折れそうになったのも事実です。食事の時は外して良いとのことでしたが、問題は食後です。外出先で歯を磨き、再び輪ゴムを装着するのは、人目も気になるし、なかなか勇気がいることでした。会話をする時も、口を大きく開けるとゴムが目立つのではないか、あるいは切れてしまうのではないかとヒヤヒヤしたり、滑舌が少し悪くなったような気もしました。しかし、人間とは不思議なもので、毎日繰り返しているうちに、あれほど苦労した輪ゴムかけも、次第に手際よくできるようになっていきました。最初は鏡が必須でしたが、数週間もすると指先の感覚だけでサッとかけられるようになり、装着していることへの違和感も徐々に薄れていきました。そして何より、輪ゴムを使い始めて1ヶ月ほど経った頃、鏡を見ると明らかに以前とは歯の噛み合わせが変わってきていることに気づいたのです。以前はうまく噛み合わなかった部分が、少しずつ理想的な位置に近づいているのが分かりました。その時の喜びは、今までの苦労が吹き飛ぶほど大きなものでした。「ちゃんと効果が出てる!頑張ってよかった!」と心から思えました。それからは、輪ゴムかけが治療の進捗を実感できるバロメーターのようになり、以前よりも前向きに取り組めるようになったのです。
私の矯正日記!輪ゴムとの格闘と喜び