A子さん(仮名・中学2年生)は、小学生の頃から上の前歯が少し前に出ている、いわゆる「出っ歯」がコンプレックスでした。友達にからかわれた経験こそないものの、写真を撮られる時には無意識に口を閉じたり、手で口元を隠したりする癖がついていました。運動部に所属し、活発な性格のA子さんでしたが、歯並びのことだけはずっと心のどこかで気に病んでいたのです。そんなA子さんの様子に気づいた母親が、一度矯正歯科で相談してみようと提案しました。初めは「装置が目立つのは嫌だ」「痛いのは怖い」とためらっていたA子さんでしたが、歯科医師から「中学生の時期は治療に適していること」「様々な種類の目立ちにくい装置があること」「治療によって見た目だけでなく噛み合わせも改善され、将来の歯の健康にも繋がること」などの説明を受け、少しずつ前向きに考えるようになりました。特に、同じように出っ歯で悩んでいた子が矯正治療できれいな歯並びになった症例写真を見たことが、彼女の背中を押しました。A子さんは、白いセラミック製のブラケットとワイヤーを選び、治療を開始。最初の数日間は、装置の違和感や歯が動く痛み、食事のしにくさに戸惑いましたが、母親のサポートや歯科衛生士からの励ましもあり、徐々に慣れていきました。部活動の仲間も、A子さんの矯正を応援してくれました。治療が進むにつれて、少しずつ前歯が内側に入っていくのが目に見えて分かり、A子さんの表情も明るくなっていきました。約2年半の治療期間を経て、矯正装置が外れた日、鏡に映る自分の整った歯並びを見て、A子さんは満面の笑みを浮かべました。「これで思いっきり笑える!」その言葉には、長年のコンプレックスから解放された喜びと自信が満ち溢れていました。今では、写真を撮られることも大好きになり、以前にも増して学校生活を楽しんでいます。