今回は、歯列矯正治療における「歯が抜ける」というリスクについて、矯正専門医の田中先生にお話を伺いました。「先生、歯列矯正をすると歯が抜けてしまうことがある、というのは本当なのでしょうか?」という多くの患者さんが抱く疑問からインタビューは始まりました。田中先生は、「まず結論から申し上げますと、適切な診断と管理のもとで行われる歯列矯正で、健康な歯が予期せず抜け落ちることは極めて稀です。しかし、いくつかの特定の条件下ではリスクが高まる可能性があります」と語り始めました。そのリスクが高いケースとして、まず挙げられたのが「重度の歯周病」です。歯を支える骨がすでに弱っている状態で矯正力を加えると、歯周病が悪化し、歯の動揺が大きくなり、最悪の場合は歯を失うことに繋がる可能性があるとのこと。そのため、矯正開始前に徹底した歯周病検査と治療が不可欠であり、治療中も厳格なプラークコントロールと定期的なメンテナンスが求められます。次に、「歯根吸収」のリスクです。矯正治療では、歯が移動する際に歯の根の先端がわずかに吸収されることが生理的に起こり得ますが、稀に過度な歯根吸収が起こり、歯の寿命に影響を与えることがあります。特に、もともと歯根が短い方や、過去に外傷を受けた歯、強い矯正力を長期間加えた場合などにリスクが高まる傾向があるそうです。これを防ぐためには、治療開始前のレントゲン検査で歯根の状態をしっかり確認し、治療中も定期的にレントゲンでチェックしながら、慎重に力をコントロールすることが重要だと強調されました。また、「便宜抜歯と歯の喪失は全く別物です」とも。スペース確保のために健康な歯を抜くことはありますが、これは計画的な処置であり、歯が自然に抜けてしまうのとは意味が異なります。最後に、田中先生は「不安なことがあれば、どんな些細なことでも担当医に相談してください。正しい情報を得て、安心して治療に臨むことが、成功への第一歩です」と締めくくりました。
矯正専門医に聞く!歯が抜けるリスクと対策