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就活か矯正か?それが問題だ!悩める大学3年生の決断
大学3年の夏、私は人生の大きな岐路に立たされていました。目の前には、間もなく本格化する就職活動。そして、もう一つは、長年悩み続けてきた歯並びのコンプレックスを解消するための歯列矯正です。どちらも、私の未来を左右する重要なプロジェクト。しかし、悲しいかな、この二つはあまりにも相性が悪そうに見えました。「就活が終わってから始めればいい」。頭ではそう分かっていました。面接で金属のワイヤーが見えるのは、どう考えてもプラスにはならないだろう。ただでさえ緊張するのに、滑舌まで悪くなったら、伝えたいことの半分も伝わらないかもしれない。そんなリスクを冒す必要はない、と。でも、私の心は晴れませんでした。鏡を見るたびにため息が出るこの口元で、自信を持って「私を採用してください」なんて、言えるのだろうか。無理に作った笑顔は、きっと引きつって、不自然に見えるに違いない。コンプレックスを隠しながら臨む面接で、本当の自分らしさなんて出せるはずがない。考えれば考えるほど、袋小路に迷い込んでいきました。就活という短期決戦を乗り切るために、見た目のハンディを避けるべきか。それとも、これからの長い人生のために、一日でも早くコンプレックスから解放される道を選ぶべきか。悩んだ末に、私はいくつかの矯正歯科のカウンセリングを訪ねました。そこで出会ったのが、歯の裏側につける舌側矯正という選択肢でした。表側からの見た目はほとんど変わらず、費用は高くなるけれど、これなら就活への影響を最小限にできるかもしれない。先生は言いました。「治療のゴールは、就活の成功だけじゃない。あなたが一生、自分の笑顔を好きでいられることですよ」。その言葉に、私の心は決まりました。私は、就活が終わるのを待つのをやめました。少しの不利や不便さは覚悟の上で、矯正治療と共に就職活動に臨むことを選んだのです。それは、自信のない自分をごまかしながら内定を目指すのではなく、新しい自分に生まれ変わる努力をしながら未来を掴み取りにいく、という私なりの挑戦の始まりでした。
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歯列矯正の世界へようこそ!主要器具とその役割
歯列矯正を始めようと決意した時、まず目にするのが口の中に装着される様々な器具です。専門的な名称が多く、一体何がどのような役割を果たしているのか、不安に思う方もいるかもしれません。しかし、これらの器具は、あなたの歯を理想的な位置へと導くための、頼もしいパートナーたちです。まずは、歯列矯正で使われる主要な器具の全体像を掴んでいきましょう。矯正治療は、大きく「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」に分けられ、それぞれで主役となる器具が異なります。ワイヤー矯正の主役は、歯一本一本に接着される「ブラケット」と、そのブラケットの溝に通される「ワイヤー」です。ワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して、歯を少しずつ動かしていきます。奥歯には、より強力な固定源として「バンド」と呼ばれる金属の輪を装着することもあります。一方、マウスピース矯正の主役は、「アライナー」と呼ばれる透明なマウスピースです。患者さん一人ひとりの歯型に合わせてオーダーメイドで作製されたアライナーを、2週間ごとなど定期的に交換していくことで、歯を動かします。目立たず、取り外しも可能ですが、効果を出すためには自己管理が不可欠です。これらの主役たちを支える、名脇役とも言える「補助装置」も数多く存在します。例えば、上下の噛み合わせを調整するために使われる「顎間ゴム(エラスティックゴム)」や、歯を動かすための強力な固定源となる「歯科矯正用アンカースクリュー(インプラントアンカー)」などです。これらは、より精密で効率的な治療を行うために重要な役割を果たします。そして、動的治療(歯を動かす期間)が終わった後には、治療の成果を維持するための「保定装置(リテーナー)」が待っています。歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」を防ぐための、極めて重要な装置です。このように、歯列矯正は決して一つの器具だけで行われるものではありません。様々な役割を持つ器具たちが、まるでオーケストラのように連携し合い、あなたの理想の笑顔というハーモニーを奏でていくのです。